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5月12日 巻坂長編その2UP。
その日は朝から冷え込んでいて、放課後帰る頃には景色はうっすらと白づいていた。
ロードレースは基本的に天気が関係の無いスポーツだが、予報では積もるとの事、
部長判断で今日の放課後の部活動は無くなり各自早めの帰宅を申し渡された。
「今年は良く降りますね~…まだこの前の雪も溶けきって無いのに」
隣を歩く坂道は鼻の頭を赤く染めながらコートのポケットに手を入れて呟いた。
自分よりだいぶ低い身長を見下ろせば、粉雪が髪に落ちる様が目に映る。
「本当だな、よくもまぁ飽きもせず降るもんだ…でも、悪くないショ」
路肩に寄せられた残雪は排気ガスと路上のゴミで黒ずんでいたが
あと数時間もしないうちにまた真っ白になってしまうことだろうさ。
予報じゃ20センチは確実だって話だし、明日が学校休みで良かったと俺は思っていた。
しかも今週末は両親が仕事で帰ってこないという、まぁ…雪で足止め食らうだろうし
月曜までは家に俺一人だ。
「でも、本当に巻島さん家にお邪魔していいんですか…?」
「良いんだよ、家に一人でもつまんねぇーし外に出られるわけでも無ぇーんだから」
そう言って見上げる坂道に視線を合わせて二、三度頷いてみせた。
今日は世間じゃバレンタインデー、恋人達の日とも言う、
ならば俺も折角だしその行事に乗っかろうかと思った。
坂道と付き合い始めてから初めての行事らしい行事でもある今日、
家に招くにはタイミングも良く、ゆっくりと過ごすには絶好の機会ショ。
「でもお前の母親には少し悪い事しちまったかもなぁ…//;
息子にチョコあげるの楽しみにしてたんじゃないのか?」
「あ、それなら大丈夫です!今朝学校行く前に食玩付きのチョコレートひと箱貰いましたから//!!」
そう言って坂道はポケットの中から5センチ程のフィギュアを3つ取り出してみせた。
ひと箱って、まさかワンケースの事だろうか…
一個200円くらいのオマケ付きがワンケースならば、まぁ、それなりの形にはなるもんか。
「坂道…ソレ学校に持っていったのか//;?」
「ハイ!一個目を開けたらいきなりシークレットが出たので嬉しくなってしまって//
今日は絶対いいことがあるなって思いました、これはそのお守りみたいなつもりで持ってきたんです//!」
この坂道が自分の好きなものを語る時の瞳の輝きといったら無い。
目の中に星が二つ、三つ生まれては瞬いてみせるのだから
見られている俺としては自分の事じゃ無いってのにドキドキしてしまう。
「そりゃー…良かったな…//」
どちらにしても、本人が幸せそうならば俺は満足なワケで…
見上げる笑顔に小さく頷いて答え、視線を空へと向けた。
後10分くらいで家に到着するが、だんだん降り方が強くなってきている。
多分吹雪いたりはしないだろうと思いつつ俺は再びマフラーに顔を埋めた。
「アレ…どこに入れたんだっけ…;」
「どーした、何か忘れ物か?」
「あ、いえ、そうじゃ無いんですけれども…;」
俺が坂道に視線を戻すと、いつからやっていたのか気が付かなかったが
ポッケットやカバンに手を入れて何かを探しているようだった。
「同じ物が二つ出たので巻島さんに渡そうと思ったフィギュアを
確かに入れてきたと思ったんですけど見つからなくて…あれー…;」
「入れてきたなら家に着いてからでも探せば良いショ、
雪降ってんだからちゃんと歩かねぇーと…」
「うわっ…っ!!!!」
その瞬間、俺の視界から坂道の姿が忽然と消えしまったではないか。
遅かった…ほぼ同時の出来事、だから言わんこっちゃ無いだろう。
視線を更に下に向けると、そこには尻餅をついた坂道の姿、
どうやら凍った路面に足を取られ見事に転んでしまったらしい。
「イタタタ…っ…;」
「オイオイ大丈夫かっ…;」
余程痛かったようで、両手を地面に着いたまま動けないでいる坂道に手を伸ばしてやると
ゆっくりと片手が伸ばされ、地面から漸く立ち上がることが出来たようだ。
「どっか痛めたとか違和感あるか;?」
「い、いえ大丈夫です、慣れてますから…//;
スイマセン、雪降ってて寒いのに足止めしてしまって…;」
コートに付いた汚れや雪を払いながら申し訳なさそうな表情で謝る坂道。
そうじゃ無いって…と、俺は大きく溜息をついて小さな両肩を掴んだ。
「クハッ…雪とかはどうでも良いんだよ、どうしたって降ってくるモンなんだから。」
そう言って今し方空から降ってきた雪を手で優しく払ってやる。
しかし言われている意味が分からないのか、坂道の表情はキョトンとしたまま
大きな瞳は俺を見上げたままで動かなかった。
「お前が怪我するのが俺は一番嫌なんだヨ、
大体好きな奴が怪我して喜ぶ彼氏が何処にいるんだよ…//;」
「まっ…ま、まっ…っ//;!!」
言葉が耳に届いた瞬間、今度は頬を真っ赤にして俯いてしまった。
気が付けよ、最後まで言わなくたって…と、俺は言葉には出さなかったが
変わりに小さく笑って坂道の手を取った。
「さーて、さっさと帰るっショ、家帰って温かいものでも飲んでゆっくりしようぜ、坂道」
「………//」
返事は無かったが、真っ赤になった顔で坂道は頷いてみせた。
お前が隣に居てくれるようになって初めて知った特別な幸せ、
そいつが逃げないように俺は離れていても、見えなくとも手を繋いでいよう。
そうだ、今日はバレンタインデーだし飲み物はホットチョコレートが良いだろう。
会話は無いが心地良い空間の中、冷たくなった手を温めるように
優しく握り返して帰宅後の計画を立てる俺の視界は
粉雪に街灯の光が反射してキラキラと輝いて見えていた。
~END~
=====================
三話目は真打登場、巻坂でバレンタインでした。
今年は良く雪が降る年ですので雪道を帰ってもらおうと思いついて書き進めました。
コンセプトは【milk】タイトルは粉砂糖をイメージしました。冬光景の巻坂はほのぼのしてて大好き(・∀・)
巻島さんの彼氏っぷりをもっと発揮させたかったなぁ…もっとギュッと近づいてもいいんじゃない巻坂。
雑誌付録のポスターを見て一人盛り上がっております。
以上企画で3話のバレンタインを無事書き上げることが出来ました。
全部雰囲気が違うものがかけて私的には結構満足です。
連載も漸く終盤にかかってきましたので、其方を進めつつ
次の行事ごとでも何か書けたらなと考えております。
それではありがとうございました(o・・o)/
ロードレースは基本的に天気が関係の無いスポーツだが、予報では積もるとの事、
部長判断で今日の放課後の部活動は無くなり各自早めの帰宅を申し渡された。
「今年は良く降りますね~…まだこの前の雪も溶けきって無いのに」
隣を歩く坂道は鼻の頭を赤く染めながらコートのポケットに手を入れて呟いた。
自分よりだいぶ低い身長を見下ろせば、粉雪が髪に落ちる様が目に映る。
「本当だな、よくもまぁ飽きもせず降るもんだ…でも、悪くないショ」
路肩に寄せられた残雪は排気ガスと路上のゴミで黒ずんでいたが
あと数時間もしないうちにまた真っ白になってしまうことだろうさ。
予報じゃ20センチは確実だって話だし、明日が学校休みで良かったと俺は思っていた。
しかも今週末は両親が仕事で帰ってこないという、まぁ…雪で足止め食らうだろうし
月曜までは家に俺一人だ。
「でも、本当に巻島さん家にお邪魔していいんですか…?」
「良いんだよ、家に一人でもつまんねぇーし外に出られるわけでも無ぇーんだから」
そう言って見上げる坂道に視線を合わせて二、三度頷いてみせた。
今日は世間じゃバレンタインデー、恋人達の日とも言う、
ならば俺も折角だしその行事に乗っかろうかと思った。
坂道と付き合い始めてから初めての行事らしい行事でもある今日、
家に招くにはタイミングも良く、ゆっくりと過ごすには絶好の機会ショ。
「でもお前の母親には少し悪い事しちまったかもなぁ…//;
息子にチョコあげるの楽しみにしてたんじゃないのか?」
「あ、それなら大丈夫です!今朝学校行く前に食玩付きのチョコレートひと箱貰いましたから//!!」
そう言って坂道はポケットの中から5センチ程のフィギュアを3つ取り出してみせた。
ひと箱って、まさかワンケースの事だろうか…
一個200円くらいのオマケ付きがワンケースならば、まぁ、それなりの形にはなるもんか。
「坂道…ソレ学校に持っていったのか//;?」
「ハイ!一個目を開けたらいきなりシークレットが出たので嬉しくなってしまって//
今日は絶対いいことがあるなって思いました、これはそのお守りみたいなつもりで持ってきたんです//!」
この坂道が自分の好きなものを語る時の瞳の輝きといったら無い。
目の中に星が二つ、三つ生まれては瞬いてみせるのだから
見られている俺としては自分の事じゃ無いってのにドキドキしてしまう。
「そりゃー…良かったな…//」
どちらにしても、本人が幸せそうならば俺は満足なワケで…
見上げる笑顔に小さく頷いて答え、視線を空へと向けた。
後10分くらいで家に到着するが、だんだん降り方が強くなってきている。
多分吹雪いたりはしないだろうと思いつつ俺は再びマフラーに顔を埋めた。
「アレ…どこに入れたんだっけ…;」
「どーした、何か忘れ物か?」
「あ、いえ、そうじゃ無いんですけれども…;」
俺が坂道に視線を戻すと、いつからやっていたのか気が付かなかったが
ポッケットやカバンに手を入れて何かを探しているようだった。
「同じ物が二つ出たので巻島さんに渡そうと思ったフィギュアを
確かに入れてきたと思ったんですけど見つからなくて…あれー…;」
「入れてきたなら家に着いてからでも探せば良いショ、
雪降ってんだからちゃんと歩かねぇーと…」
「うわっ…っ!!!!」
その瞬間、俺の視界から坂道の姿が忽然と消えしまったではないか。
遅かった…ほぼ同時の出来事、だから言わんこっちゃ無いだろう。
視線を更に下に向けると、そこには尻餅をついた坂道の姿、
どうやら凍った路面に足を取られ見事に転んでしまったらしい。
「イタタタ…っ…;」
「オイオイ大丈夫かっ…;」
余程痛かったようで、両手を地面に着いたまま動けないでいる坂道に手を伸ばしてやると
ゆっくりと片手が伸ばされ、地面から漸く立ち上がることが出来たようだ。
「どっか痛めたとか違和感あるか;?」
「い、いえ大丈夫です、慣れてますから…//;
スイマセン、雪降ってて寒いのに足止めしてしまって…;」
コートに付いた汚れや雪を払いながら申し訳なさそうな表情で謝る坂道。
そうじゃ無いって…と、俺は大きく溜息をついて小さな両肩を掴んだ。
「クハッ…雪とかはどうでも良いんだよ、どうしたって降ってくるモンなんだから。」
そう言って今し方空から降ってきた雪を手で優しく払ってやる。
しかし言われている意味が分からないのか、坂道の表情はキョトンとしたまま
大きな瞳は俺を見上げたままで動かなかった。
「お前が怪我するのが俺は一番嫌なんだヨ、
大体好きな奴が怪我して喜ぶ彼氏が何処にいるんだよ…//;」
「まっ…ま、まっ…っ//;!!」
言葉が耳に届いた瞬間、今度は頬を真っ赤にして俯いてしまった。
気が付けよ、最後まで言わなくたって…と、俺は言葉には出さなかったが
変わりに小さく笑って坂道の手を取った。
「さーて、さっさと帰るっショ、家帰って温かいものでも飲んでゆっくりしようぜ、坂道」
「………//」
返事は無かったが、真っ赤になった顔で坂道は頷いてみせた。
お前が隣に居てくれるようになって初めて知った特別な幸せ、
そいつが逃げないように俺は離れていても、見えなくとも手を繋いでいよう。
そうだ、今日はバレンタインデーだし飲み物はホットチョコレートが良いだろう。
会話は無いが心地良い空間の中、冷たくなった手を温めるように
優しく握り返して帰宅後の計画を立てる俺の視界は
粉雪に街灯の光が反射してキラキラと輝いて見えていた。
~END~
=====================
三話目は真打登場、巻坂でバレンタインでした。
今年は良く雪が降る年ですので雪道を帰ってもらおうと思いついて書き進めました。
コンセプトは【milk】タイトルは粉砂糖をイメージしました。冬光景の巻坂はほのぼのしてて大好き(・∀・)
巻島さんの彼氏っぷりをもっと発揮させたかったなぁ…もっとギュッと近づいてもいいんじゃない巻坂。
雑誌付録のポスターを見て一人盛り上がっております。
以上企画で3話のバレンタインを無事書き上げることが出来ました。
全部雰囲気が違うものがかけて私的には結構満足です。
連載も漸く終盤にかかってきましたので、其方を進めつつ
次の行事ごとでも何か書けたらなと考えております。
それではありがとうございました(o・・o)/
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