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5月12日 巻坂長編その2UP。
(小野田坂道)


素肌の感覚って、誰かに触れられるまでこんなにドキドキするものだとは思わなかった。
指先でも、手の平でも変わらないくらい心臓が幾つも身体の中にあるような気がして
緊張と少しの不安に背中がピンと吊りそうになったりもするけど、やめて欲しいとはこれっぽっちも思わなかった。


「…っ…ンっ……っ…ぁ…//」

Tシャツの中に這わされた巻島さんの手に擽ったさと緊張で
最後まで言葉になってくれないでを繰り返していると
僕の反応を嬉しそうな表情で僕と視線を合わせて微笑んでみせた。


「怖いか…?」

「ぁっ…ぁ……ぃっ…ぃぇ…大丈夫です……//;」

「無理すんな…頬がカタイっショ」


ゆっくりと語る巻島さんの唇が僕の頬に落ちて吐息混じりに擽ってみせた。
最初に唇にしたキスの熱がまだ残っているのかも知れない…
けど、それ以上に熱い吐息が尚も拍車を掛けて煽っているみたいに感覚を敏感にさせるんだ。
灯されていた間接照明も消えて、自分達の姿が薄闇の中にぼんやりと浮かぶ中で
僕の上の巻島さんが指で頬を撫でながら口を開いた。


「止められる自信は無ぇーケド、なるべく優しくするから任せてくれ」


溶けそうな巻島さんの声を耳に聞き、拭いきれない不安の中で頷くと
巻島さんの身体が下がっていくのが見えたんだ。


「…わっ…え、あのちょっと…巻島さっ…ぁっ…//;;!!」


途端に這い上がるゾワゾワとした感覚に全身に力が入り動きを強ばらせた。
何してるんだろうなんて考えなくても分かる、でも恥ずかしくてとても視線を向けられない。
さっきは首筋に感じた吐息なんて比べ物にならないくらいの熱が巻島さんから僕に与えられていた。


「そんな…トコ…ダメです…っ…な…んか…ヘンで…っ//;」


粘り気のある水音に耳を塞ぎたいけど、強ばる身体を紛らわせるのに
何かに力を分散させていなければ正気を保っていられそうにない。
僕の訴えにも構わずって感じで止めようとはしなかったので、僕はこの恥ずかしさに耐える他無くて
背中を反らせたまま、爪が食い込む程ギュッとシーツを握り続けていた。


「ふぁ…ぁ、…ぁっ…ぁぅ…っっ…っ//」


自分の声がまるで別人のようにも思える、同級生よりは声は高い方だと思っていたけど
これじゃまるで女の子みたいじゃないか…それすらも恥ずかしく思えてくる。
繰り返される微弱な運動に羞恥心を煽るような愛撫に正気はどんどん奪われているらしい…
あぁ…ダメだ、頭では何も考えられない…全身が神経になってしまってみたいだ。


「やっと…」


耳を通して恥ずかしさを侵食させる音と快感が一度止んだのと同じくして
巻島さんが僕を見ている事に気が付いた。


「気持ち良くなってきたみたいショ…今、スゲー色っぽいぜ//?」


乱れた髪を空いた手で掻き上げながら見せたのは穏やかに微笑む巻島さん。
そんな事は無いです、さっきから触ってもらってたところは全部気持ちよくて…
それでいて今の今までも…言葉は浮かぶのに変わりに出るのは酸素を取り入れようとする呼吸ばかり。
熱い、どうしようもなく体中が熱くて仕方無い。



「俺だけに見せてくれるその顔、たまんなく可愛くてヤバイわ」


胸が騒いで落ち着かない、これから僕の身に起ころうとしている事への期待とか不安。
ううん、もっとと特別な衝動と欲求、僕は今、目の前にいる巻島さんの顔がもっと良くみたい。
僕だけしか知らない眼差しと触れられた指先の熱に心が気持ちを見せたくて溢れ出してくる。
掴んでいたシーツから手を離し、残っている力を使って両手を伸ばして首に腕を絡めた。


「僕にも顔…見せて下さい…巻島さんの…顔…みたいです…//」


体重を掛けて首を引き寄せると、優しげな巻島さんの顔が徐々に近づいてくる。
綺麗なエメラルドみたいな長い髪が流れ落ち、僕の頬を掠めてベッドへと織り重なっていく。
身体を支えるように巻島さんの手が背中に添えられ、そのまま僕達はベッドへと身体を倒せば
合わせた額と、顎を少しでも上向かせれば唇にキスしてしまいそうなほど近い距離の中では瞬きをするのも惜しいくらいだった。


「本当に…本当に大好きです…ぼ、く…巻島さんの全部が大好きなんです…//」


「俺も同じショ…手にしてますます離したく無くなっちまった。
安心するとか無理な話だな、コレ…//;」


まともに吐息が言葉になっても僕が繰り返すのは大好きな人の名前ばかり。
それしか言葉を知らなくなってもいいや…僕が初めて心から好きになった人の名前なんだから。

音よりも早く、光よりも眩しく輝く願いはただ一つ。
何度願っても足りない、だから僕は何度だって願い続けるんだ。


「大好きです…//」

「クハッ…何度だって頷いてやる…だから、もっと言ってくれ坂道。
その度に俺は強くなれる気がするショ」

「ハイ…//」



繋いだ手と重ねた身体に熱と不安を溶かしながら僕と巻島さんの夜は更けていったんだ。
初めてだった僕は優しくしてもらったにも関わらず、途中で意識が曖昧になってしまったけど
それはとても幸せな光に包まれていたように思える。
カタチは違ったけれど最後の瞬間まで巻島さんの声を聞いていたんだし、望みは叶ったんだ。
この出会いは幸福そのもの、きっとこれからも僕の中では変わらない。

離れていても、顔が見えなくても、消えることなんてない
揺るぎない気持ちで僕の胸は溢れているんだ。

どうか、この先も、見えない遠い未来もずっと一緒にいられますように…と。


【END】
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