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5月12日 巻坂長編その2UP。

それはちょうど一週間前の事…。


「はあっ…どういう事っショ!?;;」


ちょうどレポート中だった俺に一本の電話が掛かってきた。
相手はよく電話をくれる田所っちからで、相変わらず豪快に笑う声が耳に響いた。


『だから、言ったまんまだっつーの。
7月3日の午後、しゃー…しゃ、…なんだっけか…金城…・あ、そうそう
シャルルドゴールとかいう空港に行け、行けば分かるぞ』


最初は近況報告をし合い、こっちは暑いだの
こっちは雨ばっかりだのなんて話をしていたハズが突然話をぶった切られた。
脈略も無いが相手は言っている意味が分かっているんだろうか、いいや分かってねーショ。
空港の名前噛むどころか覚えてないみたいだし、人に聞いちゃったし…。


「突然んなコト言われても意味わかんないショ;;!!
だいたい俺が今いるのはイギリスで田所っちが言ってる空港はフランス…っ」


俺が言い終える前に電話先からはまたゴチャゴチャとした話声、物音が擦れ響く。
周りに何人いるんだよ、金城だけじゃねーのかよ;;


『…うるせーって鳴子……(ガチャガチャ)…はぁ?馬鹿じゃねーよ、大体お前っ、
…先輩に向かって馬鹿とはイイ根性してるじゃね…(ガチャン)…オイ今泉、お前コイツなんとかしろ…っ!!』


「話反らすなショ!!…もしもし…もしもし田所っちっ!?;;」


声の遠退いた電話の先からは、懐かしい部活の風景を思い出させるようなやり取りが聞こえてくる。
つか、ホント何人居んだよ…今泉に鳴子って言ってたケドも…。
呆れ半分で呼びかけてみるも依然電話先は騒がしいまま、どうやらOBとのじゃれ合いが始まってしまったらしかった。
すると、電話口に音が近づいたかと思えば今度は別なヤツの声が聴こえてきた。


『すまない、巻島、金城だ。今、田所は取り込み中になってしまったので俺が引き継ぐ、要件は理解出来たか?』


「え、あ、あぁ…7月3日の午後にシャルルドゴール空港に行け…だったか?」


『そうだ、充分伝わっているな…話は以上だ』


「待った待った待ったーーーー!!;;」


今にも電話を切ってしまいそうな金城に俺は大声を上げて止めに入った。
しかし金城の対応は冷静そのもので、ふむと小さく唸った声の後
恐らく賑やかであろう場所を移動したのか、辺の音は拾わなくなっていた。


『どうした、何かわからない事でもあるのか巻島』

「全部っショ!理由も聞いてねーし、何があるかも聞いてないっショ;;」

『おかしいな、先程田所は確か『行けばわかる』と伝えていたと思うが…』

「だからその俺が行く理由を聞いてねーって言ってるんだっ//;」


なんで俺、電話してるだけなのにこんなに息が上がってるんだろうか…。
妙な疲れと普段出さない大声のせいか喉の調子も良くない。
やや沈黙した間の後、金城はまた静かに話し始めた。


『行けば分かる、その言葉の意味通りだ、巻島。
しかし、俺から付け足すならばお前は行かなければならない、
そうでなければ一生後悔することになるぞ、でなは…。』


ガチャ…ツー…ツー…


「もしもし金城、もしも…ーーーーっ、あ゛ーーもうっ!!;;」


こうして一方的に電話は切られてしまい、取り残された俺の呼び掛けは虚しく響くばかりだった。
最後の言葉、あれ一歩間違えば脅迫だぞ…しかも金城の声で言われると迫力があるというか、
そうしなければならないと力を持っているように聞こえてならない。
通話終了の電子音も聞き飽きた俺は諦めて電話を切った、かけ直す元気もないショ;


音を立てて携帯を机に置くと、まるで並べられたように目に映るのは
転がしたシャーペンとレポートを半分終えたノート。
しっかりと椅子に座り直し、もう一度大きくため息のような深呼吸をして肩の力を抜いた俺は
シャーペンの握り、半端になっているレポートを再開することにした。


「一体、何があるんだか…//;」


カリカリ…と順調に滑るシャーペン、ノートはもう少しで一ページが埋ろうとしている。
その片隅には走り書いた【7/3 PM シャルルドゴール空港】のメモ。
英語ばかりのノートにそれは片隅といえども異様に存在感を放ち、目立っていたのだった。


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