climber　star
　　 玉虫少年と純粋少年

国際郵便で荷物が届いた。
持ってみると軽くて、振ってみると何かガサガサと音もする。
送り状を見るとマジックで書いたのかって
疑いたくなるほど達筆な字で東堂尽八と記させている。

手紙はしょっちゅう来るが荷物とは珍しいショ、何を送ってきたことやら…。
リビングのテーブルで荷を解くと、正方形のクラフト箱が現れた。
蓋を開けると中には几帳面に立て入れされたアルミ製の袋が５袋、あ、便箋も一枚あるな。
そいつを取って開くと、これまた達筆な墨文字で近況を知らせる東堂らしい文面が波打っていた。

『海外の風呂場は窮屈だろう、気分転換に使うがいい』

東堂から送られてきたのは入浴剤だった。
日本名湯なんとかって全国各地の温泉気分を味わえるシリーズらしい。
へぇー気が利くな…明るいうちからの風呂もいいかもと俺はさっそく使ってみることにした。

暫くして風呂の用意を終え、送られてきた入浴剤の中から一つ選んで風呂場へ。
東堂から送られてきたんだ、コレしか無いショ。
箱根の湯と書かれた表面を眺めながら口を破って
浴槽に入れれば湯色は変わらないが香る温泉の匂い。

へぇー悪くないな…//

湯船に浸かりながら俺は大きく体を伸ばした。
成分や効能、解説を遮るように斜め書きされた赤文字が目立つ。

『I Love You』

やってくれたショ。遠く離れた異国の地、
風呂場で読んだ一行のラブレターに嬉しくも俺はますます日本が恋しくなった。